
元来、船は、特に漁船の場合は「魚を捕るための道具」という発想から設計されていますので、人間の事は二の次になっています。
そして、年齢に関係なく、同じ道具、同じ漁具を使って魚を捕っているわけです。
そしてあげくの果てに腰に来て、「ああ!わしも年が」で済ましてしまっていたようです。
高齢者の災害で目立つものに「転倒」があります。
平成五年度の転倒災害総数四七七件のうち二一五件を占めています。
筋肉、骨格の強さよりも、バランス感覚が大きく作用する災害パターンです。
以前にやった調査の結果ですが、「腕立て伏せ」や「握力」はむしろ四十歳代が二十歳代を上回りますが、目を閉じて片足を上げ、何秒立っていられるかを計る「閉眼片足立ち」では、年配者は若者に全くかないませんでした。
さて、私自身最近特に感じるのですが、「思い込み」が強くなり、それこそ「思い込んだら命がけ」です。
前の航海は問題がなかったとしても、今日は昨日ではありません。
今日はいつもより二〜三ミリ足が上がらない日なのかもしれない、たったそれだけの事が重大災害の発端に十分なりえるのです。
陸上産業のデータですが、五十歳代の「滑り」「躓き」による転倒災害は二十歳代の二・五倍と出ています。
さて、最後に若者と高齢者の事故にどんな特徴があるのかについて少し触れておきます。
まず、若者ですが、交通事故型であり、異常高温との接触型と言われています。
つまり、ルールを無視するか軽視する、物事を軽く見てしまう、また、無知そのものが原因になる、道具の代わりに手を使うなど、どれをとっても単純な不安全行動が目につきます。
そして高齢者は何型か、ということですが、まず、錯覚、錯視といった「思い込み型」です。
これは考えようによっては非常に危険です。
やってもいないことをやったと思い込んで次の行動に移ってしまうため、危なくてしようがありません。
「それじゃ全くアルツハイマーだよ」「冗談じゃないよ、俺はまだそこまで行っていないよ」、それはそうですが、その傾向が若い頃と比べると、少しはあって普通
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